2026-02-24
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ページをめくる音が聞こえるように。書籍スタイリングの舞台裏
一冊の本。その表紙を開く前のワクワクを、一枚の写真に閉じ込める。
それが、私が「書籍のスタイリング」というお仕事に向き合うときに大切にしていることです。
広告やメニューの撮影とは少し違い、本のためのスタイリングには、独特の「空気感」が求められます。
料理本の撮影。
そこには、単に「美味しそうな一皿」があるだけではありません。その著者がどんな暮らしを送り、どんな台所に立ち、どんな人にその料理を届けたいと思っているのか。そんな「行間に流れるストーリー」を、お皿一枚、布一枚の質感で表現していきます。
スタイリングを考えるとき、私はまずそのレシピを「読み込む」ことから始めます。
このスープは、慌ただしい朝に飲むもの?それとも、自分をいたわりたい夜に飲むもの?
もし夜のスープなら、カトラリーは少し落ち着いたマットな質感のものを。背景には、少し影を感じる木のテーブルを。
そんな風に、読者がその本を手にしたときに「自分の物語」として重なるようなシーンを積み上げていきます。
撮影の現場では、ミリ単位の調整が続きます。
ほんの少しお皿をずらすだけで、写真の中の風通しが良くなったり、逆に温かみが生まれたり。
主役はあくまで「本の中身」です。スタイリングは、その言葉たちをそっと支え、魅力を引き立てるための「額縁」のような存在。
出来上がった本が書店に並び、誰かの手に渡る。
そのとき、私のスタイリングした一枚の写真が、新しい扉を開くきっかけになれたなら。
それは、裏方である私にとって何よりの幸せです。
今日もまた、新しいページを彩るための「物語」を探しています。


