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2026-02-28 ブログ

食のプロが挑む、CF現場における「五感を揺さぶる」表現の裏側

こんにちは。どなプリ代表の山田晶子です。
普段、私たちが何気なく目にしているテレビCMやWeb動画。その中で、一瞬だけ映し出される「最高においしそうな瞬間」に、どれほどの情熱と緻密な計算が注がれているかをご存知でしょうか。

私は、栄養士としてのバックグラウンドと、フードスタイリストとしての感性を武器に、CF(広告撮影)というシビアな現場で「食の演出」を手がけています。今日は、単なるレシピ考案とは一線を画す、広告の世界におけるフードコーディネーターの仕事の真髄についてお話しします。

栄養士が担保する「リアリティ」と「誠実さ」

広告における食の表現には、二つの大きな責任が伴います。一つは「おいしそうであること」、そしてもう一つは「その食品が正しく、安全に扱われていること」です。

CFの現場において、私はまず栄養士としての目線で食材と向き合います。
例えば、お肉を焼くシーン。単に表面に焦げ目をつければいいわけではありません。その商品が本来持つ肉質や脂の乗り方を理解し、タンパク質の変性による縮みを計算に入れ、ライトの熱でパサつかないよう保水性をコントロールします。

また、近年では広告の倫理観が非常に重視されます。栄養士としての知識があるからこそ、偽りのない食材の魅力を引き出しつつ、法規制や衛生基準を遵守した上で、消費者が「信頼できる」映像の土台を作ることができるのです。

「0.1秒の記憶」を操作するスタイリングの魔力

CFの世界は、長くても30秒。料理が映るのは、ほんの数秒、あるいは0.数秒です。その一瞬で、視聴者の脳に「食べたい!」という信号を送らなければなりません。

ここで必要になるのが、フードスタイリストとしての「極限の演出力」です。
私が現場で行うのは、いわば「料理のコンサルティング」です。

  • 温度の視覚化: 湯気の立ち方は、背景の暗さやライティングとのコントラストで決まります。栄養士の知見で「最もおいしく見える温度」を維持しながら、スタイリストの技でその湯気がカメラに最も美しく映るよう、空気の流れを読みます。
  • 彩りの戦略: 彩度が高いだけが正解ではありません。ターゲットが「健康志向」なら、野菜の鮮やかさを。逆に「ガッツリ系」なら、あえて油のテカリを強調し、野性味を演出します。

器の傾き1ミリ、ソースの滴り一滴。そのすべてに、ブランドメッセージを込めています。

現場で求められる「変化への対応力」と「持久力」

CFの撮影現場は、想像以上に過酷でダイナミックです。
監督から突然、「もっとソースのシズルを強調して」「今の半分くらいのスピードでとろけさせて」といった、物理法則に挑むようなリクエストが飛ぶことも珍しくありません。

そんな時、私は調理科学の知識を応用します。粘度を高めるために食材の配合を微調整したり、熱の通り方を秒単位で管理したり。栄養士としての「理屈」があるからこそ、感覚だけに頼らない確実なレスポンスが可能になります。

また、撮影は長時間に及ぶことが多いため、何十個もの「スタンドバイ(予備)」を、常に同じクオリティで作り続けなければなりません。食材の個体差を見極め、同じ「最高の一瞬」を何度でも再現する。この圧倒的な精度こそが、プロとしての信頼に繋がります。

私が目指すのは「食へのリスペクト」を育む映像

私がなぜ、ここまで細部にこだわるのか。それは、広告が単なる消費を促すツールではなく、誰かの「今日の食事」を豊かにするきっかけになってほしいと願っているからです。

栄養士として、食材の命に敬意を払う。
スタイリストとして、その美しさを最大化する。
その二つが融合したとき、広告はただの宣伝を超えて、観る人の心を動かすアートになります。

映像を観た人が「今夜はこれを食べよう」と思い、食卓を囲む笑顔が増える。その連鎖の起点に、私のコーディネートがあることが何よりの喜びです。

「食」は、生きるためのエネルギーであり、人生を楽しむための彩りです。
栄養という数値化できる価値と、美しさという心に訴える価値。これからもその両輪を回しながら、0.1秒で幸せを届けられる表現を追求していきたいと思います。

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