0.1秒に命を吹き込む。TVCM・ドラマのフードコーディネートという戦場
テレビの画面越しに流れてくる、湯気が立ち上るシチューや、俳優さんが幸せそうに頬張るあの一皿。その「最高に美味しそうな瞬間」を作るために、カメラの後ろで心血を注ぐのが、私たちフードコーディネーターの仕事です。
スチール(静止画)の撮影と、映像の現場。
そこには、映像ならではの圧倒的な「時間」と「再現性」との戦いがあります。
「本番!」の合図に、最高の状態を合わせる
映像の現場では、テスト、リハーサル、そして本番と、何度も同じシーンを繰り返します。
しかし、料理は刻一刻と表情を変えてしまうもの。
麺は伸び、サラダはしなり、温かい料理からは湯気が消えてしまいます。
どんなに撮影が長引いても、監督の「本番!」という声が掛かった瞬間に、まるで今出来上がったかのような「最高の状態」を差し出さなければなりません。そのために、裏では何十杯、何百杯と同じ料理を準備し、秒単位でコンディションを整え続けます。
物語を動かす「小道具」としての料理
ドラマの現場では、料理はただの食事ではなく「役柄の一部」です。
「このキャラクターなら、どんな風に盛り付ける?」「このシーンの感情なら、一口の大きさはどれくらい?」
俳優さんが自然に、そして本当に美味しそうに演じられるよう、味の濃さや温度、口当たりの良さまで計算します。俳優さんから「本当に美味しくて、演技に熱が入りました」と言っていただけるのが、何よりの誉め言葉です。
0.1秒の「シズル感」をデザインする
特にCM撮影では、たった数秒の中に商品の魅力を凝縮します。
チーズがとろりと伸びる角度、グラスに付く結露の美しさ、ソースの垂れ方……。
絵コンテに描かれた理想の0.1秒を現実にするために、照明さんやカメラマンさんと息を合わせ、ミリ単位の調整を繰り返します。
そこにあるのは、料理の知識だけでなく、映像表現としての技術、そして現場を支えるチームワーク。
華やかな映像の裏側にある、泥臭くて、熱い。
そんなプロフェッショナルな現場の空気感が、少しでも皆さんに伝われば嬉しいです。


